【第28回】尿だけでがん発見?「高額な最新検査」に飛びつく前に、知っておくべき真実

「尿だけでがんがわかる」──世に溢れる最新検査の広告。その言葉を鵜呑みにしていないか? 本当に精度が高いなら、なぜ国は動かないのか。医療ビジネスの甘い罠と、エビデンス(科学的根拠)の正体。 情報が錯綜する時代、頼るべきは「最新○○」ではなく「信頼できる主治医」。 高額な検査費用を払う前に、自分のQOL(生活の質)を最大化するためにすべき、本質的な健康判断のコツを伝授します。


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📖第28回テキスト版


「尿一滴でガン検査」……。
本当に受ける価値はある?


早川:4月最終回ということで、「Makuake」のクラウドファンディングが始まっていますね。


林:はい。神楽坂乳業株式会社が新しいフェーズに入って、今までの「会社をなんとか立て直す」というフェーズから卒業できそうな雰囲気になってきました。これからは社会問題の解決に向けて、ガンサバイバーの方の雇用を進めたり、メディカルフードとしてエビデンスを出していく段階に入ってきたということで、このクラファンには皆様にその協力をお願いしたい、という意図があります。

そしてクラファンでは、プレーンタイプの甘くない神グルトもご用意しています。これまで甘みが気になって購入できなかった方、お料理に使いたい方にもぜひ試していただきたい。決してただのスイーツではないので、ぜひ召し上がっていただけたら嬉しいです。


早川:さて今回は、前回の健康診断・検診・人間ドックの話の続きということで、今日は僕の方から少し踏み込んだ質問をさせてください。

最近いろんな高額な検査が登場していますよね。遺伝子検査とか、腸内環境の検査、全身MRI、尿一滴でガンが分かると言われるような検査も耳にします。僕も受けたり、気になっているものもあったりするんですが、ぶっちゃけこういう最新の高額検査って、本当に意味があるんでしょうか?


林:今は医学が進んで「こういう血液成分が見られるはずだ」とか「この病気の人はこの数値が高値だ・低値だ」「こんな腸内細菌が見つかった」なんていう解析がすぐにできるようになりました。ただ、じゃあ実際腸内細菌の状態が分かったら、次にどうするかという話になりますよね。


早川:はい。


林:その場合「この菌を食べるといい」みたいな話になることが多い気がします。ただ、外から菌を入れても体内に根付かないんですよ。

あるいは「尿一滴でガンが分かります」みたいな検査も出ていますが、これは、うーん、ヤバいですよね。


早川:僕はこういうのに、興味を持ってしまったりするタイプなんですよね(苦笑)。でも先生からすると、やはり、あやしいと。


林:本当に尿一滴でガンが分かるなら、コストの面から見て、世界中で導入されているはずなんですよね。でもそうではないし、精度や根拠の説明が十分にされていないことが多い。腸内環境というのはそんな単純な話ではありません。


早川:あえて陰謀論的な見方をすると、「実際はそういった検査を推進する側に既得権益があって、本当はもっと普及してもいいはずなのに普及されずにいる」なんて見方もできそうですが……。


林:そんなことまで考える必要ないかな。

医者というのは、何の専門になっても基本的に病院の経営に貢献しようと思って働いている人はほとんどいないですよ。忙しくギリギリで働いているわけで、不必要な検査をやろうなんて思わないし、面倒くさいんです。大学病院や大きな病院で働いている医者が、金儲けのために検査を勧めるなんてことはまずありえないです。

ただ、早く病気を見つけてあげた方が患者さんに喜ばれるし、自分たちの業務量の観点から見ても楽になる。ガンを早期発見したいのは、患者さんや家族だけじゃなくて、我々も全く同じ気持ちなんです。


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早川:保険がきく検査ときかない検査の違いについても聞かせてください。


林:大学や大きな病院の先生が必要だと判断する検査というのは、ほとんどが保険適用されているものです。私も癌の領域で遺伝子解析を使いますが、この遺伝子変異がある人にはこの抗がん剤が効く、というエビデンスが確立したものは保険適用されていく。昔は2〜3年かけて裏取りをしていたのが、今は事実上すぐに承認されてしまうくらい速くなっています。だから基本的には、保険適用の検査で十分だとは思っています。

一方で、前回お話したCT大腸造影みたいに、良さは分かっているけれどまだ保険に入っていないものもある。でも国としては、それを検診に取り入れると高額になってしまうのですぐには動けない。でも精度が認められてくれば、保険適用に変わっていく。こういった検査でどれを選択するかは、受ける側がどこまで健康に重きを置いているかによると思います。

日本の保険制度は諸外国と比べてもかなり恵まれていますから「大金持ちしか検査を受けられなくて貧乏人は全く受けられない」なんてことはなく、保険適応内の検査であれば基本的には全ての人が選択できると思います。アメリカで同じ検査を受けたら10倍、下手したら100倍の費用になる検査もありますから、日本の最低限の保障は世界的に見ても素晴らしいんです。


早川:なるほど。


林:その上で、保険適応外の高額検査をどう考えるかというのは、繰り返しになりますがどこまで健康に重きを置くか、です。

「大腸内視鏡は苦しくて絶対嫌だから、CT大腸造影でやりたい」という人がいて、そのために10万円出すのは、その人の価値観として全然ありだと思う。それに女性の乳がん検診でいうと、従来のマンモグラフィーは乳房を板で思い切り挟む検査で、痛みを伴うこともある。それが嫌で受診をやめてしまうくらいなら、磁石と電波を使う精密検査のMRIを選択するのも正解でしょう。QOLという言葉がありますけれど、医療にも、質が問われる時代になってきています。


早川:すごくシンプルに、男性の医師に診られるのに抵抗がある女性もいますから、そういった意味でもMRIは有効かもしれませんね。


林:大腸のCTが出始めた当初は、自主診療だったんですが、今はガンが疑われるなどの場合は保険適用にもなっています。かなり精度が上がっていけば、こうして適用にもなることもあります。


早川:素人の意見で恐縮ですが、MRIを一通り受ければ人間ドック代わりに使えるんじゃないかとも思うんですが、どうですか?


林:残念ながら、全身MRIには苦手な領域もあります。たとえば早期の食道癌は、MRIではほぼ見つけられないんです。食道癌の超早期というのはミクロン単位の微細な変化で、内視鏡なら分かるけれど、MRIやCTのレベルでは検出できないんです。だから全身MRIで全部カバーできる、とはならないんですよね。検査には得意・不得意があるので、自分の状況に合わせて何を受けるべきかは、やはり専門家に判断してもらう必要があると思います。


早川:では結論、「尿一滴でガン発見」の検査は、先生の見解としては……。


林:現時点では、「NO」でしょうね。ただ、医者から見て「絶対エビデンスない」と思うような検査がテレビCMでやっていたりもするので、一般の方の判断って難しいですよね。

素直に言うと、自分が信頼できる有能な医者を一人見つけることが一番ですよ。いくら健康意識が高くてネットでいろんな検査を調べている方でも、一般の方ではどうしてもうまく理解しきれない部分が出てくると思う。だったら、信頼できる先生と「この検査、私に必要ですか?」と相談できる関係性を築くほうがずっと合理的です。

まさに昨日、私自身もそういう場面があったんですけどね。友人が「大腸内視鏡が嫌だ」というので、CTでの大腸造影を勧めたんです。


CTで撮ったところ異常はなかったんですが、撮影範囲の肺の一番下のあたりに小さな影が映ったと。よくあるパターンだとこのまま経過観察になったり、近くの病院で胸の写真を撮ってもらったりする感じになるんだけれど、画像を見てみたら小さな病変で、おそらく通常の胸のレントゲンでは何も出ないレベルだったんです。じゃあ精密な検査をするのか、経過観察でいいのか、PET-CTまで踏み込むのか、というのは医者の判断が必要な話で、やはり信頼できる先生に直接相談してもらうしかない、という返答をしました。

自分でネットで調べて混乱してしまうのが一番まずいですから。餅は餅屋ですよ。


早川:でも、そういう先生を見つけるのはなかなか難しい。


林:それが一番難しいところなんですが、やはり少しずつ色々な先生にかかってみて、これぞという人に食らいついていくしかないと思います。あとは友人や知人の口コミですね。自分のかかりつけの先生を他人に紹介したくない、という人も中にはいますが(苦笑)、基本的には評判はじわじわと広がるものです。

私の経験上、口だけの先生は、ちょっとした評判は良いかもしれないけれど必ずアンチの声も書き込まれているものです。逆に本当に腕の良い先生はアンチのコメントがあったとしても、肯定的な声が圧倒的に多い。そういう先生を探すことに時間とエネルギーを使う方が、あれこれ検査を調べるより、結果的にずっと自分の健康に役立つと思いますよ。(了)

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