【第27回】人間ドックは受けるべき? “検診・健診・人間ドック”の違いと後悔しない選択
「家で最期を迎えたいから、もう人間ドックはいらない」──。 親からそう告げられたとき、どう答えますか。早期発見の本当のメリットは、単なる「生存率」の向上ではありません。 「健診(健康診断)」と「検診(がん検査)」の決定的な違い。そして、放置することがいかに「残酷な最期」を招くリスクがあるか。 数千人の死生観に向き合ってきた元がん専門医だからこそ言える、家族が知っておくべき「覚悟」と「選択」の基準のお話です。
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📖今週のよりぬき
・受ければ死亡率が変化する健診を、国は推進している
・“診察検査キャンセル界隈”のシニアは大勢いる
・公的検診を有効活用していこう
・人間ドックのオプション、迷ったら医師に相談を
・神グルト、振ると飲むヨーグルトに!?
📖第27回テキスト版
検査を避けても、
楽に逝けるとは限らない
早川:ゴールデンウィークも近づいてきましたね。先生のお仕事は、ゴールデンウィークってあんまり関係ない感じがするんですが。
林:今年もいつも通り、ヨーグルトの製造をしているでしょうね。そもそも医者は、ゴールデンウィーク関係ないですからね。大学病院にいた頃は給料が安いので、連休中に他の病院に当直なんかのアルバイトに行って、それで給料を補填する、という意味での貴重な時間でした。
早川:そうなんですね。
それでは今回も、リスナーの方からのお便りを紹介していきたいと思います。
【お便り】
78歳の母が「お金もかかるし、もう人間ドックは受けない。何があっても家で最期を迎えたい」と言い出しました。数年前に膵臓にポリープ?が見つかり、毎年3万円のオプションで経過観察中なのですが、そのオプションも高いと感じているようです。(大阪府・健康マニアさん・45歳男性)
早川:お便りの文面からお見受けするに、お母様は1人暮らしなんでしょうかね。息子さんとしてはやっぱり人間ドッグは受けてほしいし、経過観察も続けてほしい、というお気持ちだと思います。先生、いかがですか?
林:検診がそもそも何のためにあるかというと、病気を早期発見・早期治療することで、治りやすくなるし、患者さんの負担も最小限に済む、というのが大きいですよね。命に関わる病気であれば、早期発見できなければ命を落とすかもしれません。
ではそもそも国がどうやって検診の指針を決めるかというと、国民全体でその検診を行った場合に、死亡率の変化というエビデンスが出ることを持って、推進していくんです。
たとえば乳がんなんかは治療成績がすごく上がってきていて、早期に見つかれば乳房を取らずに治療できたりもします。
だから私は基本的に、検査も診察もやって、病気は早めに治した方がいいと思っています。
ただ「放置して手遅れになってもいい」と言う高齢の方はすごく多いんですよ。あるいは中年男性にも「俺なんてどうでもいいんだ、もう好き勝手やってやる」という方がいっぱいいる。でもそういう方に限って、本当に大きな病気になると大騒ぎしたりするんですよね。覚悟が決まって「どうでもいい」と言っているわけじゃなくて、なんとなく言い訳として口癖のようになっている場合が多いんです。漠然と「楽に死ねる」と思っていますが、全然違うんです。手遅れの状態で見つかったとき、簡単に死ねるかというと、決してそうじゃない。文字通り、死ぬほど苦しいわけですよ。むしろ色々と治療している方が楽に逝けるケースもあります。
たとえば膵臓がんだった患者様の場合、放射線治療をすると、がんだけじゃなくて周りの神経にも当たるので痛みが軽減されるんですよね。治療が苦しみを軽減することはままある。だから、放置が一番楽だと思っているなら、それは大きな思い違いだと伝えたいです。
早川:この方の場合、膵臓ポリープの経過観察中ということですが。
林:膵臓のポリープというのは、おそらく水嚢胞、膵臓に水が溜まった袋状のものができているんでしょう。これは基本的には良性ですが、1%程度がん化することがある、だから定期的にフォローアップしましょう、ということだと思います。膵臓がんは死亡率が低くはない手強いがんの一つなので、医師としてはステージ1で見つけたいというのが本音です。とはいえ膵臓がんも今は生存率が上がってきていて、ステージ1で見つかれば半分くらいはちゃんと生きていけるんです。だから経過観察を続けることには、しっかりメリットがありますよね。
早川:実は僕も他人事ではなくて、うちの母も、お便りをくださった健康マニアさんのお母様と同じようなことを言っていて。
以前番組でもお話しましたが、がんで壮絶な最期を迎えた父を近くで見ているので、母は「私は人間ドックはやらなくていい。最期は家で穏やかに迎えられればいい」と言っているんです。でもそれ、今の先生の話を聞くと、破綻していますよね。「穏やかな最期」と「治療しないで放置すること」は、イコールにならない。
林:そうですね。人間ドッグも受けない、治療をしないことが楽、という思い込みを崩すのはなかなか難しいんですが、少なくとも国が推奨している公的な検診、がん検診や生活習慣病チェックというのは、そこまで大きな負担なくできるものも多いので、やっておいた方がいいと思いますよ。
自分の状態くらい、把握しておいた方がいいじゃないですか。糖尿病だって数値が高いだけで症状はでないけれど、進行すると当然、でますから。一昔前のように手足が腐るとか、失明するとか、腎不全になる可能性は下がってきているので、だったら早めに状態を知って身体の状態を整えておくのがいいと思います。健診って、別に苦しいものではないですし。
健康診断・検診・人間ドック。
それぞれの違いって?
早川:そもそもの話なんですが……。私自身も人間ドックを受けていますが「健康診断」「検診」「人間ドック」って、全部ごちゃごちゃになっているんですよね。これって、それぞれどう違うんですか?
林:えっとね、そもそも「健康診断」「がん検診」、それぞれケンの字が違いますよね。健康診断は健康な状態を把握するためのもの。がん検診は特定の病気があるかないかを検査するもの。目的が根本的に違うんです。
早川:じゃあ人間ドックは?
林:人間ドックは行政の補助とは別に、個人の意思で自分の健康状態をできる限り把握したいというものです。会社が用意しているケースもありますが、基本的には個人が詳しく知りたいというニーズに応えるものです。
まとめると、健康診断は国民全体の健康状態を把握する、検診は特定の病気の有無を探る、人間ドックは個人が自分のために徹底的に調べる、というものですね。
早川:健康診断の中に血液検査が入っているのもありますよね。
林:学校や会社の健康診断は法定検診といって、最低限の項目が決まっています。身長・体重・視力・血圧・尿検査・血液検査・胸のレントゲン、だいたいそのあたり。心電図は義務ではない会社もあります。それから子どもの胃がんや大腸がんのケースって相当少ないので、40歳以上の大人がやるもの、として認識されています。
まあせっかく会社なんかで診断の機会があるなら、ちゃんと受けておいた方がいいと思います。
たとえば前立腺がんは、国の検診には入っていないんですよね。PSAという血液検査だけで比較的よく分かるがんなんですが、国の検診に入っていない理由は、すぐに命に関わらないケースもあって、がんと共存することもできたりするから。でも自分が前立腺の状態を把握したいと思ったら、人間ドックでオプションをつけることになる。「受けたことで生存率が上がる」と言えるものは国が推進するし、そうじゃないものは個人の判断、というラインが一応あるんです。
ただ個人レベルで見ると、たとえば膵臓のMRIは通常の検診にはないけれど、それで命拾いした人もいる。
集団全体で見ると統計的な差が出るほどではないかもしれないけれど、個人にとっては全然違う話なんですよ。抗がん剤の治療を説明するときも「この薬が効く可能性は20%しかない薬です」と言っても、患者さんにとっては常に効くか効かないかの二択で、その20%という確率をどう受け取るかは人それぞれです。2割しかないと思う人もいれば、2割でも可能性があるならやる、という人もいる。検診をどこまでやるか、というのは個人の哲学でもあって、正解が一つあるわけじゃないんですよね。
早川:となると、結局は個人がどうしたいか、によりそうですね。
それから、年代によっても受けるべき検診が変わってきますよね。
林:癌検診でいうと、胃がんや大腸がんは40歳以上が対象になっています。一方で子宮頸がんはウイルスが原因なので20代30代の方がかかりやすく、20代から受けられます。年代だけでなく、家族歴や生活環境によっても受けた方がいいものが変わってくるので、目安より早めに受けてもいい場合もある。人間ドックのオプションで何を選べばいいか分からない、という方は、病院に相談すると乗ってくれますよ。
早川:ちなみに、先生はどんな健康診断や検査を受けているんですか?
林:うちは、父が胃がんで亡くなっているので、自分でも気にしていたんです。そこで調べたらピロリ菌がいたので、大学病院にいたときに自分で除菌しました。その後は胃の内視鏡はを2年に1回検査しています。
あと実は、先日参加したICCのピッチ準備で疲れていたこともあって2週間ほど前に血液検査をしたんですが、なんと2年ぶりでした。医者の不養生ですね(苦笑)。
早川:それは、ちょっと気をつけてください!
林:会社を経営していると法定検診という機会がなくなってしまうので、自分で意識しておかないといけませんね。
大腸内視鏡については、エビデンスレベルで言うと、アメリカのFDAは5年に1度を推奨しているので、それくらいでいいかと思っています。ただ興味があって、先日知り合いの先生のクリニックで大腸の検査を受けてきました。昔みたいなバリウムを使うんじゃなくて、二酸化炭素でお腹を膨らませてCTで撮るんです。その技術は向上していて、1cmくらいのポリープなら内視鏡と発見率が変わらないというデータも出てきています。大腸の内視鏡ってすごく苦しいイメージがあると思いますけど、すごく気軽に受けられたから、今後この方法がメジャーになる可能性があると感じましたよ。
🐮教えて!神グルト
〜神グルトを飲むヨーグルトにする方法は?〜
林:シンプルですけど、瓶のまま振ってもらえばいいです。振るとトロトロになって、飲めるようになりますよ。
早川:えっ、それでいいんですか?
林:端的に言えば、市販の飲むヨーグルトも同じ原理で、ヨーグルトをかき混ぜて作っているんです。神グルトは少し濃厚なので、水で少し薄めてもらうと飲みやすいですよ。
早川:せっかくの神グルトに何か加えるのがもったいないという方は、振るだけでも十分飲めるということですね。ぜひ試してみてください。(了)
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