【第2回】 神グルト誕生の舞台裏【創業ストーリー後編】

今回は、ラジオ第2回「神グルト誕生の舞台裏【創業ストーリー後編】」をテキスト版でお届けします。
第1回に続き、がん専門医がヨーグルト屋に転身した創業ストーリーの後編です。「神グルト」誕生秘話とそこにいたるまでの苦悩や今後の展望を語ります。


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📖第2回テキスト版
🧑‍⚕️がんサバイバーの方が
輝ける場所をつくりたかった


早川 林さん、本日もよろしくお願いします。第1回の収録は少し緊張されていたようですが…。


 そうですね(笑)。普段は医師として講演などする時も、緊張はします。ただ、緊張によるストレスは悪いものではなく、ある程度の緊張がパフォーマンスを上げることは科学的にも証明されています。だから自分で、あえて追い込むこともありますね。


早川 なるほど。とはいえリラックスしながら、このラジオでは色々なお話をお伺いしていきたいと思います。


 ありがたい!


早川 それでは前回に引き続き、神グルトができるまでと、神楽坂乳業設立のお話をお聞かせください。


 はい。今は「神グルト」を製造・販売する会社を立ち上げていますが、お金儲けをしたいと思ったことは最初からありません。以前、60の還暦を迎えた時。定年までは5年早かったんですが、大学の教授を辞めました。その後は“人生の終活”として、社会に恩返しをしたいと考えたんです。当時すでに医師としての仕事はやり切ったという実感がありました。患者様やそのご家族、先輩や後輩……病院では、嬉しい思い出をたくさんいただいた。とはいえ、病気を治しただけでは患者さんが社会に戻れない現実も多く見てきました。だから本当の意味で患者さんを救いきった、とは言えないかもしれませんけどね。


早川 その、社会復帰できない元・患者さんが多いというのは……。


 たとえば、がんの手術を受けて病気は克服しても、あるいは体力が戻らず仕事を続けられない人ってたくさんいるんです。あるいはご本人の体力が問題なくても、企業側が受け入れなかったり。そういう状態は非常に切ないじゃないですか。だから20年ほど、病院での業務とは別に社会的な支援をする活動をしていました。その中で一番大きかったのが、厚労省のプロジェクトで「癌対策推進企業アクション」という活動です。がんと診断されると2〜3割の人が職を失うというデータもあった。それが本当に残念で、その活動の中で企業の人事にそういった問題について提起するというか、お話しするんですが、実際皆さんが企業に持ち帰ったとしても、あっさり改善されるわけではないでしょう。


早川 そんな実態があるんですね。


林 だから自分の中では、がん患者さんの就労支援が大きなテーマの一つだったんです。

それである時、いっそ自分で会社を作って、がんを経験された患者さんたちが安心して働ける場所にすればいい、理想郷を作ればいい、と考えました。


早川 なんと、ご自身でですか?


林 そう。今思えば、大胆不敵ですよね。医師しかやったことのない人間がいきなり会社を作るんですから。でも、その時は「できる」と思ってしまったんですね。そこで思い至ったんです。「自分で、ヨーグルト作ってんじゃん」と。当時は近しい人に配るだけだったヨーグルト、これを事業にしちゃえばいいじゃんと。


早川 なるほど……! そこで、ヨーグルトとつながるわけですね。


 大きくなくていい。まずは、10人くらいでもいい。普通の会社だと辞めなきゃならなかった人達でも勤められる、社会の注目を浴びられる会社にしようと思ったんです。それって、大きな社会活動になる。そうすることで、がん医師としての終活をしようと思った。それで、今に至るわけです。


早川 ヨーグルト事業ありきではなく、あくまでがん患者さんのための会社だったんですね。


林 それが私の人生のテーマですからね。ヨーグルトを作りながらも、そのテーマは今もぶれていません。

まぁ、家族の反応はね……怒られる、呆れられるの連続だったんですけども。まぁ、妻は小学校からの同級生で、私の一番の理解者で、よく性格を分かってくれている人です。だからこれまでの人生の中で色々相談しながら進めてきたこともあったんですが、起業に関しては事前の相談なしに伝えました。「大学辞めていい?」って。そしたら「何するの」と言われて「ヨーグルトの会社作ろうと思って」って。最終的には「止めてもやるんでしょ」と。背中を押してくれました。


早川 そうだったんですね。


林 正直、資金面では本当に大変でした。退職金もすぐに消えてね。数年前に妻から「残金7万円しかない」と通帳を突きつけられた時は、さすがに申し訳なく思いました。もちろん老後の資金だってないし、子供達の生活費もない。神楽坂の家を担保に入れるほどでね。でも、お客様の声や社会貢献への思いが原動力になって、続けられていますけど。とはいえ幸い子供達は成人していたし、これから妻と飼い犬とで細々やっていければいいかと思って。でも結局、経営破綻したら無一文になってしまう。恐怖は常にありますよ。


早川 いやあ、かなりインパクトのあるお話ですね。


 私って、こういう人間なんですよ(苦笑)。


🏫がん啓発のために。
“教育者”という3つ目の肩書

早川 がんの啓発について、先生は「子どもの頃から知ってもらうことが大事」とおっしゃっていましたよね。


 はい。国民の皆さんに正しく知っていただくには、やはり小中高の段階から学ぶのが一番だと思いました。幸い、同じ考えの先生方や経験者の方々もいて、力を合わせて「学校でがんについて教えましょう」と働きかけてきたんです。


早川 でも実現まではスムーズではなかった、と。


林 最初は、全然ダメでしたね。学校はとても忙しい現場ですから。「授業でがんの話は難しいです」と断られることが多かった。それで、55歳の時に思いきって教員になってしまったんです。


早川 え、教員に?


 そう。医師として各学校にアプローチすれば、いくつかの学校で話すことはできたと思います。でも、それだと社会全体の啓発にはつながりにくい。例えばタバコの害について超一流の先生が大人向けに講演しても、そもそも届けたい人は講演なんて来ないでしょう? 一方で学校教育は学習指導要領という一種の“法律”みたいなものに基づいて、何年生で何を学ぶかが決まっていて、実施には実効性がある。離島の小さな学校でも、山奥で教師が一人の学校でも、書かれていることは必ずやる。だから「学習指導要領に“がんを学ぶ”と書いてもらえたら勝ちだ」と考えたんです。だったら自分が教員になればいい、と。


早川 そこで、通信大学に入り直したわけですか。


林 はい。通信の教育学部に入り、中学・高校の保健科の教員免許を取りました。年齢的に勉強は苦しくて、レポートも試験も苦しみまくって大変でしたが、3年かけて取得しました。でも、そのインパクトは大きくて。メディアにも取り上げられて、以前は冷ややかだった教育委員会の先生方からも「どうぞ」と歓迎されて。結果的に、コストパフォーマンスの良い資格でしたよ(笑)。


早川 実際に免許取得後はいかがでしたか。


林 ええ。とにかく実践だと思い、全国から呼ばれればどこへでも行きました。病院の仕事は優秀な同僚に支えてもらいながら全国行脚して、全国300校以上でがん教育の授業を行いました。


早川 なるほど。では先生の肩書としては、医師であり、ヨーグルト事業者でもあり、さらに教員免許を持って学校教育の中に「がんを学ぶ機会」を根づかせていく教育者でもあるんですね。


林 そうです。若い頃は臨床に没頭して、中年以降に教育の重要性に目覚めて教員免許を取り、次に「社会活動」へと広げていった。第2の人生、第3の人生と言われるかもしれませんが、私にとってはすべて一つ――“がん”というテーマに向き合い続けているだけです。


🐮教えて!神グルト
「神グルトのコスパって?」


早川 神グルトのお値段について、教えてください。


林 700gのガラス瓶入りで3,500円です。


早川 なるほど。一瞬、値段だけ聞いて「高いな」と思う方もいるんじゃないかと思うんですが……。


林 スーパーのカップヨーグルト(100g前後)を基準にすると、1日100gでちょうど1週間分、つまり1日あたり約500円の計算です。

1日500円って高い、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、現在ご購入いただいているお客様は定期購入の方が多く、月に3本程度、1万円程度ご購入される方が最も多いんです。ただのスイーツだと思うと高いけれど、サプリや健康食品に月2〜3万円をかける方も少なくない。だから考え方次第だと思います。


早川 僕は健康オタクで、月に数万サプリに課金するタイプなんですよ。忖度するわけじゃないですが、実際神グルトを食べて効果も感じられているので、そう考えるとこの値段はそこまで高い印象はないかなと。


林 このヨーグルトを作った時は、自分のためでしかなかった。だからコストとか度外視して、とにかくいいものを入れているわけですね。ヨーグルトが一瓶3,500円って世界レベルで高い価格だと思うんですけど、そのぶんいいものを入れまくって、製造原価の高いヨーグルトだとも思います。作るのに手間もものすごくかかるんですよ。と同時に大手企業だったら作る手間が抑えられるかというと、そういうわけでもない。大手企業は短時間発酵なんですけど、神グルトは大学で使用されるようなインキュベーターを応用して、温度を変えながら何倍もの時間をかけて丁寧に発酵していて。さらに低温熟成を経る。作る分には、めっちゃコスパ悪い(笑)。だから、赤字企業なんです。


早川 腸と健康に対しては、高い“コスパ”を実現しているわけですね。(了)

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